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カウンセリング未満

自らの生き様を心理カウンセラーの観点から綴った半生記、日常生活に役立つEQトレーニング講座・セルフカウンセリング講座など。
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自分への癒しの試み[09]和解の準備
平成16年に父が心不全で亡くなるまでの5年間で、
母と兄がホームを訪れたのは、たぶん5回にも満たなかったと思います。
(兄に関しては遠隔地に住んでいたので、仕方がないともいえますが)

僕は、母の代わりに(というか漠然とした呵責感に促されて)ほぼ毎月、顔を出しました。
顔を出したといっても、少しだけ話して直ぐに帰っただけのこと。
しかも「話す」といっても父は「帰ろ、帰ろ」と言うだけで、会話なんか成立したことがありません。

職員に、家族が全く知らなかった父の一面を聞かされたこともありました。
なんでも父は、頻繁に職員の手相を見たのだそうです。
しかも、ちゃんと一人一人違う見立てをするそうで、父は手相占いを趣味としていたのではないかと職員は言うのです。
母に確認しましたが、そんなことは初めて聞いたと。

想像するに、父はホステス相手に手相を占って気を惹いていたのではないか?
単に自分がもてるため。
その為だけに独学で覚えた趣味だったのかも知れません。
家族誰一人知らない趣味を。

しかしやがて、父は僕の顔もわからなくなってしまいました。
「徳二さん、誰に会いたいの?」
なんて僕が聞くと
「子供に会いたい」
などと答えるようになってしまったのです。
問いかけたのが、その「会いたい子供」なのにね。

唯一の取り柄だった健康な体も、頻繁に転倒するようになり、明らかに衰えが見え始めました。

この頃、とても割り切れない感情が僕を支配していました。

どうして父をホームに追いやったのか?
どうして同居や訪問介護などで対応しようとしなかったのか?
自分の心に問いかけてみれば、それは・・・
「復讐のため」です。

長年に渡り母を苦しめ、いい加減に生きてきて、
最後は勝手に脳梗塞になってしまった父が、
ようするに僕は許せなかったのです。

その父が離れたがらなかった家から引き離すこと、
そして孤独に苛ませることが僕にとっての仕返しだったわけです。

ところが彼は、全てを忘れてしまった。
母のことも僕のことも家のことも。

この状況下ではもはや、復讐は意味をなさないのです。
復讐は相手が復讐されていると認識して初めて溜飲が下がるのです。

この頃の気持ちは、とても複雑でした。
母のためにしたことが全て無駄になったような気がしたからです。

結果的には大好きな若い女性(ホームの職員)に囲まれた生活で、
彼にとっては幸せですらあるのではないかと思えました。

もっと仕返しがしたい、
もっともっと苦しめてやりたい。
そう思うのだけど、もはや苦しめる術がないのです。

何しろ彼にとって僕は「知らない人」になってしまったのですから。

この時期は、友人と酒を飲むと、必ずと言っていいほど僕は荒れました。
隠されていた攻撃性が表面化して、
理由をこじつけては、八つ当たりのように友人を標的にしてしまったのです。

相手をしてくれた友人達にとっては、いい迷惑だったと思います。
「思い出すと顔から火が出る」というのは、まさに今の自分です。

結局、気持ちが空回りしていたのだと思います。
「許さない」「復讐するんだ」という呪いに、僕自身が取り込まれてしまったといった感じでしょうか?

まさに「人を呪わば穴二つ」なのです。
僕は自分で自身の首を絞めようとしていたのでした。

そして亡くなる数ヶ月前、父は急速に体力が衰え始め、
とうとう一人で立つことすら出来なくなってしまいました。

かつて脂ぎって、憎たらしかったその顔は、
まるで悟りを開いた高僧にように枯れてしまいました。

憎しみはまだあるのか?
僕は自問しました。
まだ復讐したいと思うのか?
僕は自問しました。

許すとか許さないじゃない。
許さないと思っているのも自分だし、
許せるはずがないと考えているのも自分。

床に伏せる父を見下ろすのは2回目ですが、
もはや、父の姿に自分を投影することもありませんでした。

ここにいるのは「徳二」という人間で、僕とは別の人生を歩んだ者。
そこに僕の未来は一片たりとも垣間見られませんでした。

悟りきったように床に伏せる父を見つめ続けながら、
僕は何かを感じていました。
今まで味わったことのない「何か」

それは父との和解という名の「自分との和解」の予感でした。
| 自分への癒しの試み | 21:16 | comments(0) | - | pookmark |